ようこそパイセン! Vol.5 – 丹羽良徳「都市をリハビリする!」

水たまりAを水たまりBに移しかえる, 2004 / シングルチャンネルビデオ

 
 トモ都市美術館のシリーズ企画「ようこそパイセン」。 なかなかご縁のない方をお呼びして交流させてもらうというこの企画も5回目。今回は、アーティストの丹羽良徳さんをお招きします!

 丹羽さんの作品は、公共空間でのパフォーマンスから近年はさらに共産主義やナチズムに関する市民感情を炙り出すことで現代における国家観を考えるプロジェクトまで、多角的になっています。ふわっとした説明になってしまいますが、社会で誰もが当たり前と思っている制度や公共概念を、パフォーマンスを通じて検証し批評していくようなスタイルが一貫しているかと思います。トモトシも鑑賞者として、毎度感銘を受けております。ちなみに過去にトモトシの作品を丹羽さんの作品と比較されたことがあって、一方的に親近感を覚えている方でもあります。ただこれまでお話しさせてもらったことはなく、とくに2016年以降丹羽さんが拠点をオーストリアに移してからはそのチャンスすらなかったのでした。 

 現在、丹羽さんは3月15日から開幕する第8回横浜トリエンナーレ出展のために帰国されており、滞在先がトモ都市美術館からアクセスしやすそうな場所という噂を聞いて、このイベントをお願いしました(吉田山に繋いでもらいました!)。当日は前半に丹羽さんのトークと、後半には飲食しながらざっくばらんに交流する時間を設けます。以下のような、トモトシがお聞きしたいポイントをメインに進めていく予定ですが、適宜質問等もあれば歓迎です。

オーストリアに拠点を移してからの作品と出来事

  1. オーストリアとドイツ3都市を巡回した「私的空間からアドルフ・ヒットラーを引き摺り出す」2018年(芸術祭steirischer herbstのコミッションワーク)
  2. モスクワ近代美術館での展示ボイコットと「モスクワの美術館に請求書を送る」2022年

・進行中/今後の作品

  1. 「地球の裏側で戦争を終わらせる」2023–
  2. 芸術祭steirischer herbstのコミッションワーク(極右が台頭すると予測されるオーストリアの国政選挙期間に合わせて公共空間での介入行為)
  3. その他

・都市の条件

 これまで政治体制やその歴史、資本主義経済の仕組み、文化的背景に別の視点や経路を提案する作品を制作されてきた丹羽さんが考える都市とは。また私有財産制度が始まり資本主義が加速した現在の都市に対する思いとは。

・プーチンによるウクライナ侵攻とパレスチナで起こっていることについて

 プーチンによるウクライナ侵攻とイスラエルのガザ侵攻との関わりから、国立西洋美術館内覧会でのアーティスト有志によるアクションまで。

 会場はイベント終了後も終電まで開けていますので、またトモトシの常設展も鑑賞可ですので、飲食しながらゆっくりしていただければと思います。どなたでもぜひ!お待ちしております!

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ようこそパイセン!Vol.5 丹羽良徳「都市をリハビリする!」 
日時:2023年3月23日(土)19:00 – 22:00(会場は終電まで解放) 
ゲスト:丹羽良徳 
企画・会場:トモ都市美術館(墨田区文花2-6-3) 
参加費:500円 (別料金で軽めの飲食を用意します)
幹事:トモトシ 
当日問合せ:080-3057-9642 
※予約不要、直接会場へお越しください

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ゲスト略歴
丹羽良徳 – Yoshinori NIWA

1982年生まれ。ウィーン在住。作品タイトルに明示されるスローガン的で自己説明的で、そしてほとんどの場合は非生産的で無意味な行動を公共空間で実現する過程の一部始終を映像記録に収めることによって、制度化された公共概念の外縁を描く。近年の展覧会として「第8回横浜トリエンナーレ」(横浜美術館, 2024)、「ブカレストビエンナーレ10」(ブカレスト, ルーマニア, 2022)、「ヒットラーの廃棄:地下室から美術館まで」(オーストリア歴史館, ウィーン, 2021)、「憤慨せよ!社会的怒りの時代の芸術」(クンストパラスト美術館, デュッセルドルフ, 2020)、「steirischerherbst’18」(グラーツ, 2018)、「瀬戸内国際芸術祭2016」(直島, 2016)、「MAMスクリーン005:丹羽良徳映像集」(森美術館, 2016)、「歴史上歴史的に歴史的な共産主義の歴史」(Edel Assanti, ロンドン, 2015)、「愛すべき世界」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館, 2015)、「あいちトリエンナーレ2013」(あいち芸術文化センター他, 2013)、「六本木クロッシング2013展ーアウト・オブ・ダウト」(森美術館, 2013)、「ダブル・ビジョンー日本現代美術展」(モスクワ近代美術館、ハイファ美術館, 2012)など。オタズ財団(スペイン)、カディスト財団(パリ/サンフランシスコ)、ヴロツワフ現代美術館(ポーランド)、森美術館(東京)、一橋大学(東京)などのコレクションに作品が収蔵されている。 https://yoshinoriniwa.com/


Photo by Yelena Maksutay
デモ行進を逆走する, 2011 / シングルチャンネルビデオ
私的空間からアドルフ・ヒットラーを引き摺り出す, 2018 / 芸術祭「シュタイヤーマルクの秋’18」によるコミッション・ワーク / インターネットで展開されるドキュメンタリー映像シリーズ、新聞広告と衣類回収コンテナ


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ようこそパイセン!企画趣旨
作家として活動を続けていると、会ったり、一緒に仕事したりする人が固定されてきていると感じるときがある。いつの間にかシーンのなかでグループやポジションができ、共通言語を持つもの同士で固まっていく。そして、別のグループと交流することが難しくなっていたりする。そもそも先輩にあたるような方々には話しかけづらい。けれどこのままだと一生トモ都市美術館に来てくれなさそうな人もいる。でもたくさんの人が住む「都市」の中に、鎖国的なトモ都市美術館とかナンセンス以外の何ものでもないじゃないか、、、。そのような状況を打破すべくこの企画は考えられた。少し遠くに感じられた表現者たちをご招待し、お酒の力をかりて作風や築いてきたキャリア、今考えていることなんかを存分に語っていただきたい。そして、僕たちのことも知ってもらいたい。また、同じように知ってもらいたいという人にも集まって欲しい!それこそ都市にも芸術にも、本来垣根などないはずだと思うから。だから、ようこそパイセン!

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TOMO都市美術館