Unfocused Modern

「ハイ、チーズ！」に合わせて肩を寄せ、笑顔をつくる。
家族写真はいつも、キマっている。換言すれば、家族写真はいつも“近代”的だと思う。※１
多様な（雑多ですらある）キャラクターをもつ個々人が、瞬間的に特定のフレームに納まり、それが記録として残る、うがった見方ではあるが。そして後になって画像を振り返り、「私たちの営為が “ 近代 ” の範疇であった」ことが確認される。 歴史は常に “ 近代 ” 性を帯びてしまうのだ。
今制作においては、「ハイ、チーズ！」の前後の（これまで切り捨てられてきた）表情や仕草までをも等価に記録することを試みる。「ハイ、チーズ！」が“ 近代 ”のピークだとすれば、その前後の時間には山なりに “ 近代 ” 性が薄れていく過程のようなものが見てとれるかもしれない。
以上のように、 “ 近代 ” の濃淡のグラデーションを表すことが今制作の目論見のひとつであった。 そしてこれは現代における（美術）表現が、どうしようもなく “ 近代 ” に包摂されるという問題への回答でもある。※２
“ 近代 ” を対象化することが不可能だとしたら、まず “ 近代 ” を注視し、その毛並みを把捉することから始めなければならないだろう。

※１ 文章であっても映像であっても、記録するメディアは基本的に同じ性質をもつ。 “ 近代 ” を乗り越えようとすること自体が “ 近代 ” の枠組みの内側の行為である、といった問題。
※２ “ 近代 ” を乗り越えようとすること自体が “ 近代 ” のフレームの内側の行為である、という問題。

Hi, Cheese!’ and a smile—family photos always seem to capture the moment perfectly. In other words, they are always modern. Within a single frame, diverse and even chaotic individuals are frozen in time, recorded from a somewhat skeptical perspective. Later, looking back, we see that ‘our activity belonged to modernity.’ History always adopts a ‘modern’ character.
In this project, I aim to capture the facial expressions and gestures before and after the ‘Hi, Cheese!’ moment. The ‘Hi, Cheese!’ itself represents the peak of ‘modernity,’ and by looking at the moments surrounding it, we may observe a fading of ‘modernity.’
One of the goals of this work is to explore the gradation of ‘modernity.’ It also serves as a response to the problem that contemporary (art) expression is inevitably shaped by ‘modernity.’ If it’s impossible to objectively define ‘modernity,’ perhaps we should begin by observing it and tracing its subtle marks.

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