Mobius Reunion
・変化に寄り添う住宅
退職を間近にひかえた夫婦のための住宅。
さらに子供たちは全員独立して家を出るというタイミングでの新築計画であった。
30年間仕事と育児に多くの時間を割いてきたが、これからは二人だけで過ごすことになる。
この劇的な変化を設計の主要なテーマとした。
変化を柔軟に受け止め、関係の再構築を促すような空間構成を検討した。
・完結と連結
形態のインスピレーションは2つのリングが連結する構造だった。
それぞれのリングは独立しつつも依拠しあっている。
このモデルを空間化し、両サイドを妻と夫の領域、中央を共有の場所とする。
各領域には、リビング・ダイニングキッチン・ベッドルーム・バス・トイレが配置され、生活は領域内で完結する。
・恋愛を空間化する
お互いが接する唯一の場所は、中央のコモンルームのみである。
機能的にはそれぞれの領域内で完結するため、ここへは純粋に相手に会いたいときに来ることになる。
しかしいくら会いたくても、相手がここへ来なければ会うことはできない。
相手が何を考えているのかを考え、自分の意志を伝え、お互いの距離を見極める、、、これは恋愛である。
・住宅は語る
一般的な住宅の間取りは問答無用に「夫婦や家族は常に一緒にいるべきだ」と迫ってくる。
それがしっくりくる夫婦もいれば、そうでない夫婦もいるだろうと思う。
「一緒にいなくても家族だよ」と語ってくる住宅や、「週末だけは夫婦らしく!」と言ってくれる住宅があっても良いだろう。
今回は、「夫婦が一度距離を置き、関係を再構築する」ような住宅を提案した。
生活の大半は住宅で行われる。
ゆえに住宅は、良くも悪くも住人に多くの影響を与えてしまう。
これからも住人の変化に寄り添える住宅について考えていきたい。